3.シュテックラー二浴現像の実際
...あ〜ん、ダメだ。400のネガはいい感じですが、100のネガは薄すぎます...
これはやはり二浴現像の原理をよく理解しなければイケナイみたいです。
検索に引っ掛ったHPによれば、中川氏の著書にはだいたい次のような解説があるらしいです。
この現像法では、A液で処理した際にフィルム膜面に染みこんだ現像液メトールがB液中の促進剤(ホウ砂)に触れて現像が進み、感光率の高い部分は早く現像が進むけれども、その分、主薬の疲労率も高いため、一定の濃度に達すると現像が自動的に停止する。逆に感光率の低い部分はゆっくりと現像が進行し、長い時間現像が続くが、フィルム乳剤に浸透した主薬は徐々にB液中に解けだし拡散するので、やはり自動的に現像が停止する。フィルム乳剤が厚く塗られた高感度フィルムは早く、逆に乳剤が薄く塗られた低感度フィルムはゆっくりと現像が進行し、どちらも自動的に停止する。露光過度のコマは早く、露光不足のコマはゆっくりと現像が進み、どちらも自動停止する。このためいずれの場合にもB液の現像打ち切り時間に必要以上の注意を払う必要がなく、明部・暗部とも必要十分に現像され整った階調のネガを得ることが出来る...
この説明によると、A液ではメトールがフィルムの乳剤に滲み込むだけであって、B液中ではフィルム面の感光率に応じてフィルム現像が進行するということになるようです。B液はホウ砂の溶液であってアルカリ液そのものですから、ここで現像が進むのは理解できます。フィルムに滲み込んだメトールが放出されるまで銀が減少してゆき、すべて放出されると現像が停止するということなのでしょう。納得いかないのは、それでは何故、A液に亜硫酸ソーダをこんなに加えるのかという点です。つまりA液はかなりアルカリ化しているのですから、既にここで現像は進んでいるはずじゃないのかなあって、ド素人考えでは思うわけです。もしA液の段階で現像が始まっているなら、「高感度から低感度まで各種フィルムの現像時間が同一で大丈夫」とか「露光の過不足は現像の過程で調製され、ほとんど同一に仕上がる」とかは間違いということになりゃしないかと思われるのです。そうなるとこの現像法のメリットも少なくなるわけで... う〜む、どうなんでしょう?
さらに英語のサイトも検索すると、やはり出てきました。
例えば
このサイトの内容は本格的ですね。説明を読んで疑問が徐々に氷解しました。やはり二浴式現像法の理解には混乱があるようです。
二浴式現像法には二種類あって、それは一浴目の液のpH値が高い・低いによって区別されるそうです。第一浴のpHが低い場合、そこではメトールがフィルムに滲み込むだけで現像は起きません。この場合には中川氏の説明がほぼ適用できるでしょう。他方、第一浴のpH値が高い場合、つまり十分にアルカリ化している場合、そこでは既に現像が進行しているわけです。シュテックラー処方はこれに該当します。この場合は第一浴の時間を調整することでハイライトの現像をコントロールできることになるらしいです。これとは逆に、第一浴のpH値が低い場合はハイライトが正しく現像されず非常にフラットなネガになってしまうそうです。
このサイトの説明を読んでみると、シュテックラー処方というのは、その詳細な原理はいまひとつ理解できていませんが、感度にかかわらずA液の現像時間は同一でよい、というものでは決してないということは私にもわかります。シュテックラー処方の利便性はむしろ、ネガのコントラストを微妙に調整できるところにあるようで、かのアンセル・アダムスは、例のゾーンシステムを実践するためにこの現像法を推奨しているらしいのです。
サイトの説明を読んでゆくと、次のような記述がありました。シュテックラー処方は良好な粒状性を得ることができるもののネガの尖鋭度はイマイチで、尖鋭度を高めるにはA液の亜硫酸ソーダの量を減らしホウ砂を少量加えると良いそうです。またB液のアルカリ度を高めるとシャドウのコントラストが高まり、同時にA液の現像時間を減らすことでソリッドな輪郭が得られるそうです。つまりA液の現像時間とB液のアルカリ度を調整することでネガのコントラストを微妙にコントロールすることができるわけですね。
シュテックラー二浴現像法は、なるほど、良好なネガを得るための魅力的な現像法にちがいないようです。しか〜し、ここまでその仕組みがわかってくると、当初のお手軽現像の目論見とは反対に、ますます精妙な現像をせねばならないところに追い込まれてゆくことになってしまいますよねえ。う〜む..
.